イベントレポート お笑いライブ

オリジン・FEC・よしもと沖縄の3事務所が合同のお笑いライブが開催!沖縄お笑い界のトップランナーが勢揃いした熱い一夜を振り返る!〜「てんたか」観覧記〜

(ライブのレポートのため、出演者の皆さんの敬称は略させていただきます。ご了承ください)

※本記事は2024年3月に公開したものを加筆・修正し、再掲しています。

オリジンコーポレーション、FECオフィス、よしもと沖縄といえば、所属芸人が切磋琢磨しあう、沖縄を代表する芸能事務所だ。

その3事務所が初めて合同でお笑いライブを開催するという話を筆者はFECのお笑いライブで聞きつけ、これは絶対にレポートを書かねばと思い、即チケットを購入した。

チケットは販売開始から、あっという間に完売。配信チケットも好調な売れ行きだったそうだ。今、沖縄ではお笑い熱が高まってきている。

開催される場所は那覇市牧志にあるライブハウス「Output」。ライブハウスでありながら、音楽ライブだけでなく、お笑いライブの会場としても頻繁に利用されている。これはコロナ禍の中、お笑いの美学に魅了されたという店長の上江洲修氏の意向もあるようだ。

この日の沖縄はあいにくの雨模様。しかし、Outputに通じる階段には、すでにファンが詰めかけており、開場を待ち侘びる姿があった。

沖縄のお笑い界において、最前線で活躍する9組が出場するとあり、その期待感は大きい。

友達同士、笑顔で開場を待つ人もいれば、いつも見合わす顔を見つけて、会話を弾ませる人もいる。沖縄のお笑いライブに来る常連客の年齢層は幅広い。老若男女、多くの人々が沖縄のお笑い界を支え、盛り上げていることが分かる。

定刻通りに開場されると、お客さんが続々と店内へと入っていく。その顔には3社合同という、未だかつてなかったお笑いイベントに対する期待感と高揚感があふれていた。

オリジン・FEC・よしもと沖縄の3事務所による合同お笑いライブ「てんたか」が開催される前に、芸歴5年以下の芸人による日本一を決める大会、「UNDER5 AWARD 2024」の沖縄地区選考会が行われた。

司会進行役を務めたのは、よしもと沖縄所属の「ありんくりん」。頭に手拭いを巻き、沖縄風の着物に身を包んだ、いかにも昔の「うちなーにーせー(沖縄の青年)」という印象を受ける、ひがりゅうたとシカゴブルズのユニフォーム(33番)に身を包んだ、アメリカ人の父と日米のミックスである母を持つクリス。

今や沖縄で彼らを知らない人はいないほどの人気者が大役に抜擢された。

音楽に合わせて登場するなり、2人は「5分間踊ります」と言うと、本当に踊りだしてしまう(笑)。お客さんも手拍子で2人の踊りを盛り上げる。

踊り好きのうちなーんちゅにとって、これは大好物な展開(笑)。誰も止めることなく、次第に盛り上がっていく拍手に、舞台上のありんくりんのダンスもキレを増していく。

「はい〜、嘘さ〜」

さすがに5分踊っていては、ライブが始められない(笑)。りゅうたの一言で、会場から笑いが起きる。

続いて、「てんたか」本編の前に、芸歴5年以下の芸人による日本一を決める「UNDER5 AWARD 2024」の沖縄地区選考会が開催されることが2人から告げられる。

どうやら、出場する芸人は、舞台裏でかなり緊張しているらしい。そんなド緊張している芸人には、会場の盛り上がりが必要だと力説するクリス。そのために芸人が出てきたら、さっきのダンスを踊ろうと、お客さんにムチャな要求を投げ掛ける(笑)。

その後、大会の趣旨を説明する2人。この大会、本戦に出場して優勝すると100万円の賞金がもらえるという。りゅうたが沖縄では賞金は出ずに「油味噌」しかもらえないと言って茶化すと、クリスが「どこの地域の大会ね」と素早いツッコミを入れる。

ありんくりんの2人を見ていて思ったのは、とにかく面白い芸人はボケとツッコミのテンポやリズムが心地良いということ。トップを走る芸人であれば尚更だ。

ありんくりんの2人のボケとツッコミがガッチリと噛み合い、ベストなタイミングで笑いを誘い、お客さんの緊張をほぐしていく。

審査方法と注意事項、暗転後にクリスがマネキンになっているというギャグをはさみ笑いを取ったところで(笑)、いよいよ芸歴5年以下の芸人たちによる、緊張感満載の賞レースが幕を開けた!

1組目 ヤングアンドオールド

トップバッターで登場したのは、よしもと沖縄の若手コンビ「ヤングアンドオールド」。ヤング担当の宇賀ちゃんと、介護担当の長Dの2人は、なんと年の差40歳というのだから驚きだ。(ちなみに年齢は、宇賀ちゃんが64歳、長Dが24歳)客席からは驚愕の叫び声も聞こえていた(笑)。

そんな2人の漫才は、宇賀ちゃんがさまざまな若者の言葉を覚えることで若返りたいと、若者に流行りの言葉や動きに挑戦する内容。しかし、いかんせん宇賀ちゃんは64歳のため、うろ覚えなのか本家とちょっと違った動きをしてしまう。このズレ方に、お客さんからは笑いが起きていた(笑)。

極めつけは、宇賀ちゃんが歌い出した「♩ラーラーララーラ、ウルトラソウル♩」というワンフレーズ。おそらく、Adoの「唱」のイントロ部分だと思うのだが(笑)、これが本当に見当がつかなかったようで、長Dが「それは知りません」と崩れ落ちてしまう(笑)。

一見すると、年齢差だけが注目されがちだが、暴走気味になってしまう宇賀ちゃんを長Dがリードする形でネタを進めていたのが印象的だった。

宇賀ちゃんのパワープレーのボケと、長Dの頭脳的なツッコミ。これからが楽しみなコンビだ。

2組目 八ツ橋ず

八ツ橋ずは、島シーマとたつきのアマチュア男女コンビ。金髪の島シーマと、コンパクトな体型のたつき。一見すると、お笑い芸人っぽくない2人なのだが、どのような漫才を見せてくれるのか楽しみだ。

開口一番、シーマが「3月になりましたね。すっかりマッチングアプリの季節ですね」とひとボケ(笑)。ああ〜確かになぁ…とはならない(笑)。相方のたつきも、そんな季節はないと冷静なツッコミで返す。

しかも、シーマは、たつきとしてマッチングアプリに登録したと衝撃の告白。その理由が、マッチングアプリにいる、加工した写真を使ったり、実際よりも高い年収を書くなど、見栄を張る人を救いたいからだという。

そして、その大役にたつきを抜擢した理由は、彼が下の中の男だからという強烈なディスりを入れてきた(笑)。これには、お客さんも思わず吹き出してしまう(笑)。

最後はアプリに登録したお客さんの中にマッチした人が来ているという、ややサスペンスホラー系のオチ。

昨今、ルッキズムに対する批判がある中、思い切ったネタを作った度胸に拍手を送りたい。お笑いを規制でがんじがらめにしてしまっては、笑う側も何かと窮屈だ。ライブなのだから、これくらいはみ出している方が芸人としては面白い!お笑い芸人として、度胸満点な2人に注目していきたい。

3組目 のぶお

よしもと沖縄に所属しているのぶおは、登場から客席に笑いと小さな悲鳴(笑)を巻き起こした。

バラエティ番組でよく見る、白鳥のコスチュームを身につけたのぶおは、自分自身から「キャラが渋滞しているのぶおです」と自己紹介(笑)。その潔い発言に会場からは笑いが漏れた。

披露したネタは、「膝が痛いあるある」だ。誰もが白鳥のコスチュームに目が行ってしまい、気がつかなかったが確かに膝に装具をつけている。意表を突かれてしまった。

「100m走のクラウチングスタートと見せかけて菜々緒ポーズをしてしまう」などのギャグを繰り出すのぶおに、「いやいや、膝が痛いあるあるじゃないだろ!」と思わずツッコんでしまいたくなってしまった(笑)。

最後は、白鳥がパオーンと鳴き、「いや、象なんかい!」という、下ネタのような下ネタでないようなオチ。これには、お客さんも思わず吹き出す。

あるあるネタと見せかけて、とんでもない方向へ持っていく、シュールさの中に勢いを加えた独自のスタイルは破壊力抜群だった(笑)。

4組目 きゃんまーぶ

岩倉愛樹と斎藤尚吾のコンビ、きゃんまーぶは、よしもと沖縄所属の芸人。おそらく、UNDER5 AWARDに参加できるのは今回が最後ではないだろうか。

彼らの漫才を見たことがあるのだが、確かな技術に裏打ちされた独特の世界観が魅力的なコンビだ。

披露したネタは、きゃんまーぶワールド全開なもの。出だしは、「彼女を疑ってしまう」という、何か深刻な問題がありそうな雰囲気が感じられる。つかみからグッとお客さんを自分たちの世界に引き込んできた。

ところが、ここで落差のある縦カーブのようにストンッと落としてくるのがきゃんまーぶの魅力。なんと疑っていたのは浮気ではなく、彼女が「魚ではないか?」ということ(笑)。この落差には、客席も笑わざるを得ない(笑)。

彼女が語尾に「ギョギョ」とつけたり、見た目がピチピチしていたり、性格はサバサバしていたりと、言葉遊びも入れて畳み掛けてくる。結局、そんな彼女だけど、エロく見えてしまうというオチがついた。

独特の世界観と言葉遊びのテクニックに思わず笑ってしまうと同時に、その世界観に筆者は惚れ惚れとしてしまった。きゃんまーぶ、大化けするような気がしている。

5組目 桃花鳥

前半戦のトリを務めたのは、女性2人組のコンビ桃花鳥だ。このコンビ名、難読漢字だ。簡単には読めないだけに、一発で覚えてもらえると狙ってつけられた名前かもしれない(考えすぎか?笑)。ちなみにコンビ名は「トキ」と読む。

よしもと沖縄所属のよすみと、アマチュアのもえかの2人が組んだ越境コンビ。この選考会に参加したコンビの中では、唯一の女性コンビだ。

ネタは、よすみが玉ねぎの嫌いなところを挙げていくというもの。いきなり玉ねぎが食べたくないと土下座をするよすみに、なんとか玉ねぎの良いところを伝えようとするもえかの必死さが笑いを誘う。

野菜をルッキズムで見ているというよすみは、玉ねぎの自己評価だけは高そうなところが嫌いなのだそうだ(笑)。俺頑張ってますよ的な内容を長文でSNSに上げているイメージらしい(笑)。

また、皮を1枚ずつ剥いていったら、らっきょになるところも嫌いだという始末。最後は、もえかが「そんなに剥いてしまったら食べるところが少なくなって、玉ねぎ農家の人が泣いてしまう」と言うと、「えっ、玉ねぎ切りすぎて?」と、よすみがキレイにボケて落としていた。

初見のコンビだったが、発想力と言葉の選び方が素晴らしい。笑いどころが分かりやすく、そこでしっかりと笑いが取れていたのもすごかった!期待あふれる若手女性コンビ、注目だ。

6組目 つかやまちえ

後半戦のトップバッターは、FEC所属の女性ピン芸人のつかやまちえ。筆者のFECお笑い劇場のライブレポにも登場しているので、ぜひ読んでみてほしい。

彼女の素晴らしさは「日常の異化」。その発想力は、デビューして1年にも満たないとは思えないほどだ。

ネタはカップルを誘拐したサラリーマンという設定。なぜサラリーマンはカップルを誘拐したのか、その謎が少しずつ明かされていく。

このサラリーマン、仕事帰りのモノレールでイチャつく「ないちゃー(沖縄県外の人の意味)カップル」に腹が立ったことがきっかけで誘拐を働いたようだ。なんという理不尽な理由(笑)。

しかし、そんなぶっ飛んでいるサラリーマンもウェルカムんちゅの1人であるため(笑)、手を縛っているのは海ぶどう、履き物はゴーヤーで作ったものをカップルに履かせていた(笑)。この、「ウェルカムんちゅ」のくだりで会場は大爆笑。一気にお客さんの心をつかんだ。

※「ウェルカムんちゅ」とは、国内外から訪れる観光客を「うとぅいむち(おもてなし)」の心で温かく迎え入れる沖縄県民のことを言う。沖縄県が推進している。

最終的に、実はこれは観光ツアーの一環で「沖縄やっけーむん(厄介な人)ツアー・怒りのサラリーマン編」だったというオチ(笑)。ここでも会場から大きな笑いが起こっていた。

今回も目のつけどころが面白く、不思議なツアーを考え出したちえ。本当にその発想力には脱帽だ。FECのトップにたどり着く日も、そう遠くはないかもしれない。これからも注目の若手芸人の1人だ。

7組目 ぼっち

ぼっちは、オリジン所属のお笑い芸人。それも小学生というのだから驚きだ。昨年開催されたオリジン新人発掘オーディションの優勝者ということに、より一層驚かされた。

愛らしい姿から、一体どのようなネタをするのか非常に気になる。

ネタはけん玉大会に出場したぼっちが、大人の言動に疑問を持つというもの。「あるある〜」というものから、子どもならではの発想まで大変楽しませてもらった。

けん玉の技を決めようとスタート体制に入ると、雑念が入ってしまうぼっち。「親は、お年玉を預かるっていうけど、いつまで預かるんだろう?」や「大人は諦めるなってよく言うけど、大人自身は諦めるの早いんだよな」など、大人が唸ってしまう内容だ(笑)。

極めつきは、自家用車が「ダイハツ」の車で、修理は「ビッグモーター」に出していたなど、社会問題まで絡めてきた(笑)。これには会場が大爆笑に包まれる。

最後は、けん玉の技術もしっかりと見せてくれたぼっち。これは末恐ろしい若手の登場だ。子どもながらに、しっかりと考えているのが分かる。このまま、お笑いの道を歩いて行けばトップランナーになれる逸材だ。

8組目 うらちゃん

弁当屋をやりながら芸人をしているという、うらちゃんが登場。二刀流で頑張る人を応援せずにはいられない筆者にとって、大好物の存在だ(笑)。

そんなうらちゃんが披露したネタは、弁当屋に来る困った「いきが(男性)」ベスト10というもの。飲食店や接客業をやっていると、困った行動をするお客さんに多く出会ってしまうのかもしれない。

第10位は優柔不断なお客さん。10分も迷う人がいたようだが、お昼時間が無くならないか心配になる(笑)。

また、番外編として困った「いなぐ(女性)」も発表。それは、弁当屋の中でイチャつくいなぐだそうなのだが…そんな人いる?(笑)多くのお客さんがそう思ったのだろう、笑いが起こっていた。

一番共感を得て爆笑を搔っさらっていたのが、駐車場に斜めに停めるから、1台しか入らないというネタ。確かに、たまに見かける光景だ(笑)。あれは、店としてもだろうが、客側からも非常に困る。身に覚えのある人は注意するように(笑)。

毎日さまざまな人が訪れる弁当屋。芸人との両立は大変だろうが、頑張ってもらい、面白いお客さんのネタを披露してほしい。

9組目 アンジェリータ

宜野湾市を拠点に活躍する、山城コンセイソンと佑河のコンビ、アンジェリータ。FM宜野湾でラジオ番組を持つ人気者が参戦だ。

披露したネタは、山城コンセイソンの体格をいかしたコント漫才。言いたいとを我慢するのはストレスになるから、発散するためにはちゃんと言い合おうと佑河が提案してネタが始まる。

「どうせお前みたいなデブは冬でも体温高いから、こそこそクーラーつけるんだろ!」

かなりキツイ一言をぶち込んできた(笑)。冬に体温が高いやつを見るとイライラするという佑河に対して、「今ならお前の方が体温高いよ」と冷静なツッコミをするコンセイソン。

佑河は、とにかく冬にこそこそクーラーつけるやつを注意したいから、その役をコンセイソンにやってほしいと頼みこむ。

こっそりとクーラーをつけたコンセイソンを見つけた佑河が、それを責めるのだが、ここから少し毛色が変わってくる。クーラーのリモコンを取り上げるはずの佑河が、リモコンを軸にして、なぜかパントマイムを披露し始めたのだ(笑)。

最後は、パントマイムに疲れたのか、佑河がクーラーの温度を下げてしまい、「お前が暑くなってるやし!」とツッコミを入れて落としていた。

話術もさることながら、できているのかできていないのか、微妙なライン上にあるパントマイムには笑ってしまった(笑)。話術と動きでお客さんの笑いを取れるアンジェリータは、これからも注目しておくべき芸人だろう。

10組目 もんぶらん

UNDER5 AWARD 2024、大トリを務めたのは、オリジン所属のもんぶらん。武藤徹太郎とジャッカル山田、2人とも一度見たら忘れられないインパクトだ(笑)。初見の芸人さんのネタは、どうしてもワクワクが先立つ。

2人のネタは、アイドルになりたい徹太郎が、ジャッカルに熱烈なファンをやってほしいというもの。見た目のインパクトが強烈なため、設定を聞いて想像しただけで笑いを堪えられなかった(笑)。

アイドルの名前は、「火遊び」(笑)。到底、アイドルとは思えない名前に会場が笑いに包まれる。

ジャッカルは、「火遊びちゃん、ラブリーキュンキュン、可愛すぎて神〜」と、熱烈なアイドルオタクをやっていたかのようなレスポンスを返している。ジャッカルの風貌と、そのギャップの大きさからお客さんは吹き出してしまう。

そして、徹太郎が「タピー!」と叫んだら「タピタピタッピ!」と返すコールアンドレスポンスを要求。そのムチャぶりにジャッカルは「発注もらってないから」と言って困惑の表情を浮かべる。

火遊びからの重大な報告が、タピオカミルクティーを卒業することだったり、ニューアルバム「タピだち(旅立ち)」の発表など、先ほど練習したコールアンドレスポンスの伏線が散りばめられている。

最後は、徹太郎が「私がタピって言ったら分かるよね」と振っておきながら、「キャッサバイバイ」とまったく違うフレーズを歌ってしまい、「タピタピタッピやらせ!」とジャッカルがオチをつけて終了した。

見た目のインパクトもさることながら、とにかくジャッカルの声の良さが最高!ぐっと引き込まれる力を持っていた。ネタの構成もオチまでの伏線が効いていて、笑わずにはいられなかった(笑)。

ここで、UNDER5 AWARD 2024沖縄地区選考会は終了。お客さんの投票によって、次のステージに進む組が決まる。結果は、後日SNSにて発表されるとのことだ。

10組ともに素晴らしいネタばかりで、笑わせてもらった。沖縄の若手芸人は、まさに原石。これから、さまざまな場面で磨かれ、輝きを増していくに違いない。

今回エントリーした芸人は、注目して追いかけていければ良いなと思っている。

若手芸人10組による、UNDER5 AWARD 2024の興奮冷めやらない中、オープニングの音楽がフェードインしてきた。お客さんの期待と興奮が、より一層高まる。

いよいよ、3事務所合同のお笑いライブ「てんたか」の幕が開く!

「どうも〜!始まりました。オレジンコーポレーション、FEC、よしもと沖縄の合同ライブ、てんたか〜!」

元気あふれる掛け声とともに登場してきたのは、FEC所属の山城皆人、オリジン所属の弘瀬智己(菊一文字)、よしもと沖縄所属の松田しょう(初恋クロマニヨン)の3人だ。3人は、それぞれの事務所における人気芸人であるため、「てんたか」の豪華さが感じられる。

ライトの光が強いのか、「照明で3列目以降が見えない」とこぼす3人。そこで照明が落とされたのだが、想像以上にお客さんがいたせいか「見えないほうが良かったかも」や「めっちゃ緊張してきた」とつぶやき、客席から爆笑をかっさらった(笑)。

また、この3人で司会をやることがなかったため、新鮮すぎてどうして良いのか分かず、探り合いの状況で進行するという珍現象も発生(笑)。しかし、そこは沖縄お笑い界のトップランナーとして活躍する3人。次第に呼吸が合い、お客さんを笑わせてくれていた。

沖縄のエンタメ界のムーブメントを作るため、作家だけでなく、芸人も団結して立ち上げられたライブ「てんたか」。出場するのは事務所を代表する次の9組だ。

わさび(FEC)

カシスオレンジ(よしもと沖縄)

しんとすけ(オリジン)

ありんくりん(よしもと沖縄)

ノーブレーキ(オリジン)

知念だしんいちろう(FEC)

ベンビー(オリジン)

ハンサム(FEC)

初恋クロマニヨン(よしもと沖縄)

紹介のために出て来たわずかな時間で、しっかりと笑いを織り交ぜてくれる芸人の心意気には、惚れ惚れしてしまう。筆者の芸人へのリスペクトは、このような心意気に惚れたところからきている。

特に、後半の知念だしんいちろうからベンビー、ハンサムの挨拶のくだりは最高に笑わせてもらった。

どんなテンションで出るか悩み、テンションを上げて出てきた知念だ。後に続くと言いながら落ち着いたテンションで登場したベンビー。それを咎めるために再登場した知念だ(笑)。元気いっぱい「どうも〜!」と出てきたハンサム。この流れは、長年培ってきたお笑い勘のなせる技に違いない(笑)。

最高のメンバーが、最高のお客さんを集め、最高の箱に集合した。いよいよ、沖縄エンタメ界の伝説の一夜が始まろうとしている。

今やラジオパーソナリティとして沖縄県民誰もが知っている「お耳の恋人」(笑)具志堅将司と、琉球歴史ドラマ「阿麻和利」で全島の涙を誘う演技を見せてくれた小だいらくんのコンビ、わさびが伝説の一夜のトップバッターを飾った。

登場と同時に将司が、「何回も言いますけど、審査員はもう終わりだよ。表情かたい人が多い」と、UNDER5 AWARD 2024の審査員の空気を引きずっているお客さんに注意を促した(笑)。

この一言で客席の緊張した雰囲気がスッとほぐれたようだ。お客さんからは、安堵したかのような笑いがこぼれていた。

ネタは、沖縄にユニバーサル・スタジオ・ジャパンを作りたいという将司が、沖縄テイスト満載のテーマパークを提案するというもの。

その名も「ユニバーサル・スタジオ・チャタン」(笑)。確かに沖縄テイスト満載だ。駐車場が広く、1日4回エイサーのステージがあるという。

「これほとんど琉球村じゃない?」

小だいらくんの的確なツッコミに会場が爆笑に包まれる。それでも将司は引き下がらず、「島ゾーリ作り体験もできる」と反論するが、これも琉球村で行われているサービス。お客さんの笑い声が止まらない。

スパイダーマンにかけて、スッパイマンのブースやオリオンビールのブースがあると言う将司に、「それ産業祭りだろ」とツッコむ小だいらくん。

テンポの良くボケとツッコミが繰り返されるため、客席からは爆笑につぐ爆笑が巻き起こる。会場全体を大きな笑いの波が包み込む。

とにかく、USJのアトラクションをもじったボケが連発されるのだが、これが沖縄県民の心をくすぐる場所ばかり(ユニオンや県民の森など)のため、笑いが止むことがなかった。

具志堅将司の動きや表情を絡めたボケも大好きな筆者だが、小だいらくんツッコミも好きでならない。時には冷静に、時には慌てた様子で、たまに本当に戸惑っているような様子でツッコむ姿に愛嬌を感じる。

2人の息の合った漫才やコントはFECの中でも、トップに入る面白さ。すでにピンとしても有名な2人だが、コンビとしての価値は特級品と言っても過言ではない。

仲村駿稀と仲本新のコンビ、カシスオレンジ。仲本は、夕方の情報番組のレポーターとして活躍している。O-1グランプリやお笑いバイアスロンなど、沖縄のお笑い賞レースの決勝に進出したこともある実力派コンビだ。

舞台への出演も積極的に行っており、吉本興業という日本最大のお笑い事務所の最前線で活躍する彼らの漫才を初めて生で見る筆者の期待感も爆上がりだ。

ネタは、「結婚」について。30代半ばを迎える2人だが、まだ結婚していないため結婚についてどう考えているのかを仲村が尋ねる。

「俺は、お前と結婚するよ」

仲本の告白に「もっと色んな人を見たほうが良い」と、仲村がどこか方向性の違うツッコミを入れたことで会場が笑いに包まれる。

仲本が小さくて丸い子がタイプであることを伝え、誰か紹介して欲しいと言うと、「ああ、じゃあカントリーマアム」と仲村がボケる。

これには仲本が激怒。「カントリーマアムとは結婚できない」と至極真っ当な答えを言う仲本だが、その理由が秀逸だ。なぜなら、自分は英語が話せないから(笑)。仲本はカントリーマアムを人間だと思っている(笑)。この切り口は想像していなかったので大爆笑してしまった。

その後も、カントリーマアムを人間だと思い込んでいる仲本は、仲村の説明に振り回されることになる。例えば、不二家のカントリーマアムであることを伝えると、ミックスの人だと勘違いし「日本語が話せるな」と安心するし、バニラとココア(味)があることを伝えると名前の雰囲気から「アイドルか?」と勘違いする始末。

仲村の呆れた表情と、仲本の真剣な表情が対照的で吹き出さずにはいられない。勘違いの仕方も振り切っているため「次はどう間違えるのだろう?」と期待してしまう。

最後は、仲村がカントリーマアムをお持ち帰りして、車で食べたというセリフを大いに勘違い(笑)した仲本に対し、カントリーマアムはお菓子だと伝える。すると仲本が「お前の方が”おかしいよ”」とキレイに落としたのだった。

とつとつとした喋りの仲村と、後半はマシンガンのように言葉を繰り出す仲本の掛け合いは、どこかテンポがズレていて面白い。おそらく、2人とも自分のペースでやっているからだと思うのだが、対照的なしゃべくりが笑いを誘っていた。

オリジンのトップバッターとして登場したのは、O-1グランプリ2023優勝者という実績を持つコンビ、しんとすけだ。こちらも初めて生で見るため、筆者が楽しみにしていたコンビ。

首里のすけは、2023年3月まで朝のラジオ番組のレギュラーとして出演しており、「SHURIPPON!」のギャグで人気を博した人物だ。また、オリジンコーポレーションの代表も勤めており、プレイングマネージャーとしての顔も持っている。

実は筆者、相方のしんを見るのは初めてではない。昨年開催された大喜利模合杯という、沖縄一の大喜利強者(おおぎりちゅ〜ば〜)を決める大会で見ている。大喜利に大切な瞬発力と発想の面白さが際立った回答をしていたことを思い出す。

そんな2人が披露したネタは、犬の結婚式の司会という設定。しんがペットのお葬式があるくらいだから、今後、犬の結婚式が流行るんじゃないかと思い、その司会の練習をしているという。

なるほど、確かにペットのお葬式があるのだから、ペットの結婚式が流行る可能性はあるかもしれない。この発想には有能なビジネスマンの空気が感じ取れた(笑)。

その練習を見てもらい、何かアドバイスが欲しいというしんに対し「スタンダードが分からない」と慌てた様子でツッコむ首里のすけ。そして、それを無視して司会を始めるしん(笑)。

「はじめまして、司会をします、ワンとすけのワンと申します」

と、突然しんが改名していることに客席から笑いが。しかし、何ともストレートで気持ちの良い改名だ(笑)。しかも、参列者は全員犬というファンタジー要素まで取り込まれていて、これもお客さんの笑いを誘った。

犬の新郎新婦が重なり合って入場してきてしまい、「発情です」と言ってみたり、新郎の仕事が麻薬取締犬に対し、新婦の仕事は校庭内をたまに走る犬だったりと、ファンタジーな披露宴を想像させるという不思議な展開。しかし、これがツボに入り、会場からは終始笑いが漏れていた。

さらに、乾杯の挨拶に「ドギーマン」が登場するわ、披露宴の余興にマーチングバンドならぬ「マーキングバンド」が登場するわと、想像を超えた展開となり会場が笑いの渦に包まれる。

最後は、マーキングバンドで犬が縦笛を吹く様子を見て、犬アレルギーのしんが「鳥肌が凄いというより、凄くかゆいです」とオチをつけて終了した。

ファンタジーな展開になると、どうしても想像が追いつかないことがあるのだが、しんとすけの漫才は違う。犬の結婚式という設定が想像がしやすかったことと、しんの状況説明の巧みさがあり、目の前で結婚式が繰り広げられているような錯覚してしまうほどだった(笑)。

演技力と言葉の力で想像させるのは、なかなか難しいことだが、それをやってのけたしんとすけは本当に凄い!

UNDER5 AWARD 2024の司会進行を務めていたよしもと沖縄所属のお笑いコンビ、ありんくりんが登場。2人の人物像は簡単に説明させていただいたので、割愛させていただくが、2人ももちろん人気・実力ともに沖縄のトップを走っているコンビだ。

特に、りゅうたの演じる「まさとし先輩」は、沖縄のやっけーしーじゃ(厄介な先輩)の特徴を的確に捉えており(笑)、大人気のキャラクターになっている。

一方、相方のクリスも多彩な才能の持ち主。シンガーソングライターとしてデビューしており、「タンクトップボーイ」は一度聞いたら忘れられない名(迷?笑)曲だ。

ありんくりんが披露したのはエイサーのコント。地元のエイサーに参加するために久し振りにやって来たクリスが、リーダーの青年に振り付けを教えてもらうところから始まる。

とにかく、このリーダー役のりゅうたが怖い(笑)。クリスが打ち解けようと思って発する冗談を一切寄せ付けず、「公民館10時まで」と終了時間を強調して、エイサーの振り付けだけを淡々と教えていく(笑)。

青年会に入ったことはないが、ボーイスカウトに所属していた際、大勢の前でエイサーを披露する機会があった筆者は「ああ〜、練習のとき、こんな怖い人いたぁ〜」と思いながら、ビクビクして(笑)見ていた。

りゅうたはエイサーに命をかけているかのように、振り付けを教えるため無駄口を許さない。口癖は「公民館10時まで」だ(笑)。

しかし、独特のタイミングでパーランクーを叩いたり、叩く際には「8年目の顔」をするなど、表現するのが難しい指示でクリスを戸惑わせる。

年中口説に合わせ、タイミングよくパーランクーを叩かなくてはいけないのだが、そのタイミングを教えてくれないため、何度もクリスは間違ったタイミングで叩いてしまう。

「今じゃない」

この「公民館10時まで」と「今じゃない」の連発と、クリスが時々発する愚痴とも恨み節とも取れる発言が会場中を爆笑の渦に包み込んだ。

ありんくりんの武器は、伝統芸能をコントの中に取り込んでいるところではないだろうか。りゅうたの三線の腕前は素晴らしいものであり、エイサーに関してもしっかりと基本を押さえている。

また、クリスへの愛のあるイジリも素晴らしい。このご時世、相手のルーツをイジると批判もされるだろう。しかし、クリス自身が言われたことに対して、しっかりとツッコミを入れることで中和している、とインタビューで答えていたのを見たことがある。それによって成立するイジリは、ありんくりんの大きな武器だ。

ありんくりんのコントは、シニカルな部分も含めて面白い!

ポジティブあゆむとブーブーの幼馴染の2人によって結成されたコンビ、ノーブレーキが前半のトリを務める。

実は、筆者はブーブーを見るのは2回目、しかも初めて見たのは「沖縄麻雀エンタメカップ」の会場。楽しそうに麻雀を打つブーブーの姿を思い出す。

ノーブレーキは、O-1グランプリ決勝に3回進出し、お笑いバイアスロン銀メダル獲得している実力派コンビだ。

出演芸人紹介では、「呼ばないと面倒臭い芸人」と言われていたが(笑)、そんなキャラクターの彼らは、一体どのような漫才を見せてくれるのだろうか。お客さんも、ワクワクしながら出番を待っている。

登場したあゆむは、挨拶をした後、突然こう言い始めた。

「ごめんなさい沖縄の人間なのによろしくお願いしますって言っちゃった」

そして「ゆたしくうにげーさびらー」と方言で挨拶をし直すと、ここからあゆむは、わざとらしい方言を話し始める。

「てぃーぱちぱちー(拍手)」や「うちなーんちゅの宝やんどーやー(沖縄の人の宝だよね)」など、ブーブーが「やめて」とツッコみたくなるのも仕方のないくらい、あからさまな方言(笑)。

「ありんくりんさん見てごらん!尊敬しているんだよ!」

あゆむは、方言でコントを繰り広げたありんくりんを引き合いに出して、ブーブーに抗議。しかし、ブーブーは至極真っ当な(笑)ツッコミを入れる。

「あれは、ありんくりんさんがやるから面白いんだよ!お前、普段そんなしゃべり方じゃないだろ!」

すると、あゆむは「ふどぅんの話はさんけーどー(普段の話はするなよ)」と、「ふどぅん」という微妙に方言に聞こえる言葉をねじ込んできた(笑)。「普段」を「ふどぅん」と言っていたが、これが方言のような、方言でないような感じで心がモヤモヤする(笑)。

ここからは、わざとらしい方言を使いながらボケていくあゆむ。

会場の笑いが最高潮に達したのは、県民はびっくりしたときに「お願い〜」と言ってしまうという、沖縄県民あるあるを披露した瞬間だった。女性限定の言い回しかもしれないが、確かに沖縄の人は驚くと「お願い〜」と言っていることがある(笑)。

ノーブレーキの漫才、この着眼点は面白かった。普段なら、聞き流してしまうような方言や言い回しを見つけ、それをボケとして利用されてしまっては笑いが起こらないはずがない。

目のつけどころが素晴らしいノーブレーキ。前半戦のトリを任される実力は確かなものだった。

FECのピン芸人と聞いて、筆者がまず思い浮かべるのが「知念だしんいちろう」だ。さまざまなキャラクターになりきる演技力はもちろんだが、漫談でのしゃべりのテクニックも素晴らしい。

キャラクターになりきる力で言えば、県民の誰もが知っている「大兼のぞみ」だろう。ユタキャラの彼女の「見えるよ〜」は、沖縄県内の流行語大賞をあげても良いのではないだろうか?(笑)

実力派の知念だが後半戦の先陣を切って登場。果たして、どのようなネタを持ってきたのか期待感が高まる。

知念だが選んだネタは「ユタになった母」だ。知念だが中学2年生のころ、突然ユタになったという母のエピソードを漫談で話し始める。

ある日帰ってきた知念だは、マンションの和室の押し入れが突然改造されているのを発見。三段の神棚が作られ、真ん中に水晶玉、その後ろに千手観音像が置かれているの見た知念だはこう思ったそうだ。

「布団どこいったば?」

この一言で会場から笑いがわき起こった。いや、疑問に思ったのそこかい!と思わずツッコみたくなってしまう(笑)。

その布団の行方は、家を改造して住みやすくする某番組であれば(笑)床下収納に入っているかもしれないがと前置きし、知念だの家では隣の部屋にぶん投げられていたエピソードにつなげた(笑)。ちょっと乱暴な知念だの母の行動に笑いが起きる。

知念だの母は、よく当たるユタなのだそうだ。知念だが福州園(那覇市久米にある中国式庭園)のロケから帰ってきたときには、どこに行ったのか知らなかったはずなのに、中国人がついてきていると言ってお祓いをしたという。

弟である知念臣悟のときには、イタリア人の霊がついていたのでお祓いをしたそうだ。そのときは塩を撒いても帰らなかったため、トマトを投げてお祓いをしたらしい。そのとき知念だは「トマトを投げるのはイタリアじゃなくてスペインじゃない⁉︎」とツッコんだという。

すると母は「イタリア人は気まぐれだから大丈夫よ」と答えたそうだ。弟に、どこに行ったのか聞くと「カプリチョーザ」だったとのこと(笑)。しかしこの話、笑い話だけでは終わらなかった。カプリチョーザとは、「気まぐれ」という意味の言葉。なんという当て感(笑)。その事実に、客席からは驚きの声が上がっていた。

最後は、自分も母親の力を少しだけ受け継いでいるという知念だは、会場内の空気が悪くなっていると発言。ちょっと大変なことになっているかもしれないが、お客さんを救う術を知っていると話す。

「今から母に電話して、幸せになる気を飲み物に送ってもらうので、飲んで帰ってください。そうしなかったら、大変なことが起こります。その人、ちょっと喉が渇きます」

キレイなオチに(笑)会場から爆笑が起こった。

知念だの漫談は本当に面白い。想像力を掻き立てる内容を見事なまでの話術で語ってくれるため、話がスッと入ってくる。話が入ってくるので笑いどころも分かりやすく、思い切り笑えるのが知念だの漫談の素晴らしいところだ、と筆者は勝手に思っている。

ベンビーの面白さといえば、沖縄に実在していそうな不思議で面白いキャラクターを、うちなーぐち丸出しで演じることではないだろうか。いないはずの人物なのだが、どこかで見かけたような気持ちにさせるキャラクターを作る洞察力と演技力。それがベンビーの魅力だ。

そんなベンビー、50歳の節目となる今年、東京進出を決心した。一歩踏み出す勇気を県民に示し、何歳からでも挑戦することの格好良さを教えてくれたのだ。ベンビーの新たな一歩は、県民に期待と勇気を与えてくれた。

ネタは、市役所にやってきた、どこか抜けているオジィ(笑)。何か気になることがあるようで、市役所に足を運んできたという設定でコントがスタートする。

「ビーチパーティーに向かっているときの車内は、ビーチパーティーに入りますか?」

なかなかのパワーワードが炸裂(笑)。オジィはとにかくそれが気になるようで、しつこいくらいに市役所の職員に尋ね続ける。

「車の中はビーチパーティーくらい盛り上がってますけど、ビーチパーティーではありませんよね?ビーチに着いてからがビーチパーティーですよね」

もう、何が言いたいのかよく分からない(笑)。これがオジィにとっては大問題のようだ。市役所に来て白黒つけてもらいたいほどなのだから、相当のものだろう(笑)。

いかにも実在しそうで、きっと実在しないであろうオジィのキャラクターに会場は大爆笑。言い回しの面白さもあって笑いが止まらない。

駐車場はビーチパーティーなのか、ビーチに右足を入れたら、右足だけがビーチパーティーなのかなど、どことなく哲学や禅問答を思わせる質問を繰り返すオジィ(笑)。見ているだけで少し賢くなりそうな気がした(笑)。

なぜかその問題は納得したのか、次はビーチパーティーで5時前に帰ろうと言う人がいるが、何時までが5時前になるのかを質問し始める。さらには、家に帰ってきたときにポケットに砂が入っているときがあるが、この砂はビーチがどうかまで尋ねていた(笑)。

筆者は、ここでお腹が痛くなるほど笑ってしまった。本当にこれは禅問答だ。ベンビーは禅問答を笑いにまで昇華させたのかもしれない(笑)。

最後は、自分でポケットから砂を出すと、「ここはもうビーチだからビーチパーティーですよね?」と言い出し、警備員に連れ出されてしまう。その警備員に対して「ここはもうビーチだからライフガードですよね」と言ってオチがついた。

筆者はベンビーの頭の中を覗き見たい気持ちでいっぱいになった。禅問答のような質問の繰り返しを思いついた発想力には脱帽だ。しかも、それを笑いとして成立させているのだから賞賛の一言。最高に笑えるキャラクターを演じたベンビーに盛大な拍手を送りたい!

金城博之と仲座健太のコンビ、ハンサムがトリ前に登場。FECでもベテランの域に入る2人が伝説の一夜を盛り上げる。

金城といえば、言わずと知れた大民謡歌手「護得久栄昇」として知られる沖縄が生んだスーパースターだ(笑)。沖縄県民で、護得久栄昇を知らない人はいないほどの人気を誇っている。

ちなみに、筆者の母は、つい1、2年前まで、護得久栄昇を本物の民謡歌手だと思っていた(笑)。

仲座健太は、お笑いだけに止まらず活躍の場をテレビにラジオ、舞台と広げ、FECの団長として事務所を引っ張る存在。そして、何よりも護得久栄昇をプロデュースした手腕も評価されている、敏腕プロデューサーでもある。

今日披露するネタは、「那覇の人に対する偏見(?)」について。那覇の人は自分の考えを押し通そうとするとして、仲座が大いにキレる鉄板の展開だ(笑)。

出だしは、50代の金城が「仮面ライダーになりたい」と子供のような夢を語り、仲座が「40代と50代のコンビなんだから、そんな夢物語は止めよう」とたしなめる。それに金城が「年齢とかは関係ないでしょ。そもそも止める権利はお前にないんだから、黙ってついて来い」とピシャリ!

ここから、仲座が怒涛のごとくキレ倒す(笑)。

「そうやって、常に自分の意見が通ると思っているのは、那覇の人間の考え方だよ」

最初は怒りを抑えた話し方だった仲座だが、ギネス記録を目指して作った那覇大綱引きの綱が世界一になるも、動かなかったことや那覇大綱引きで交通規制がかかり、観光客が迷惑を被っていることを語り出すと、次第に怒りのボルテージが上がっていく(笑)。

「ギネス目指して何が悪い。迷惑かけましたか〜!」

金城のこの一言で、仲座の怒りに完全に火がついた。全島各地に綱引きの文化があること、自分の地元にも綱引きがあることを顔を真っ赤にしながら力説。那覇大綱引きの綱を作るために、他所で綱を作るための藁が不足していると大激怒(笑)。

「琉球王朝時代のように、また庶民からむしり取るつもりですか?あの時代は平和だったって言ってるのは那覇の人だけだよ!」

強烈なパワーに押され気味の金城。その姿と、仲座の怒りに満ちた真っ赤な顔と口上に会場が大爆笑に包まれた。

最後は金城が、これからは綱を小さくして、余った綱を分け与えると発言。仲座は「分け与えてあげる⁉︎那覇の人の考え方」と言って落とした。

ハンサムのネタのパワフルさにはいつも驚かされる。ケンカ漫才も度が過ぎると、お客さんは引いてしまうものだがハンサムのそれは逆だ。仲座が興奮すればするほど、会場がわき上がる。

その原因は、仲座の怒りのパワーを飄々と受けている金城にあるのではないだろうか。押し寄せる怒りのパワーを受け流すことで、中和しているのだ(笑)。稀有な存在の2人が織りなす、唯一無二の漫才。言葉、動き、パワーが渾然一体となった漫才がハンサムの魅力だ。

3事務所合同で開催されたライブ「てんたか」。その大トリを飾るのは、初恋クロマニヨンだ。

初恋クロマニヨンは、O-1グランプリ優勝、お笑いバイアスロンでは2連覇を含む通算3回の優勝を成し遂げた絶対的チャンプと言っても過言ではないトリオ。

比嘉憲吾、新本奨、松田しょうの3人が織りなすネタの数々の中でも、筆者はやはりコントが好きだ。緻密に作り込まれたコントは、事務所は違うため失礼かもしれないが、筆者には「東京03」を彷彿とさせる。

そんなコント師として頭一つ抜けている初恋クロマニヨンは、今夜、伝説の一夜の大トリにどのようなネタを持ってくるのだろうか。お客さんの期待は最高潮に達していた。

設定は美術館、新本が独り語りで進行していくコントだ。松田は女性に、比嘉はおじいさんに扮して美術作品に見入っている。

異変は松田から始まる。なぜか新本を2度見しだしたのだ。2度見を何度も繰り返す松田、それを気味悪がる新本。その様子に会場からは笑いが漏れる。

そこから松田は3度見、9度見、11度見と回数を増やしていく。新本の「◯度見〜!」という言葉が会場にこだまする。

すると今度は比嘉が新本をガン見!(笑)。もう、新本の「〇〇見!」の言葉をお客さんが欲し始めていた(笑)。「〇〇見〜!」と叫ぶと会場が笑いに包まれる。

さらなる異変はすぐに始まりたたみ掛けていく。比嘉がその場で足踏みをし始め、新本のそばまで走り寄ってじっと見つめたのだ。

「ランニング見〜!!」

会場は大爆発!ランニング見というパワーワードには、笑わざるを得ない強烈な力が込められていた(笑)。

新本は、この状況を美の探究心からくるものだと考えることにしたようだ(笑)。その後も、「正面見」や「モナリザ見」など、聞いたこともないような「〇〇見」が飛び出してくる。これは「〇〇見」だなと分かっていても、ついつい笑ってしまう(笑)。

しかし、この混沌は松田と比嘉の「〇〇見」対決に発展する。お互いが得意とする「見」を繰り出すのだが、勝敗はつかない。そのとき、お互いがお互いの得意とする「見」を習得し出す(笑)。繰り出される「見」と「見」のぶつかり合い。

筆者自身が今、何を書いているのか分からなくなるくらいの「見〜!」の連発に(笑)、会場は揺れんばかりの大爆笑に包まれていた。

初恋クロマニヨンのコントには非常にパワーがある。人の心を揺り動かし、笑いを誘い出すパワーだ。それは、話術であり、動きであり、キーワードの選択の妙でもある。その中でも、キーワードの力強さをまざまざと見せつけたのが、今夜のネタだ(笑)。これだけ「見〜!!」という言葉が開場中のお客さんの耳に残ったことが、かつてあっただろうか?(笑)

初の3事務所合同ライブとして開催されたお笑いライブ「てんたか」。その伝説の一夜は、お客さんの耳の奥に「見〜!」という新本の叫び声を残して終幕した(笑)。

エンディングは、ネタを披露した9組が舞台上に集合。今宵開催れた「てんたか」を振り返る。

はずだったのだが、全員が口にしたのは「見〜!」の話題だった(笑)。どうやら初恋クロマニヨンのネタは、お客さんだけでなく芸人たちの耳にも爪痕を残したようだ(笑)。

このメンバーで集まってまたやろう!そんな声が聞こえ、「ああ、やっぱりこのライブは、芸人にとっても最高だったんだな」と感じた瞬間だった。しかし、「それで、「見〜!」全員でやろうぜ!」の声が(笑)。会場中のお客さん、舞台上の芸人全員がそっちかい!と思ったのではないだろうか?(笑)しかし、芸人の顔を見てみれば自ずと答えが出ていた。このライブが相当に楽しかったのだろうということをお客さんは、はっきりと理解したに違いない。

最後は芸人同士で、楽屋での出来事のチクり合戦や、ブーブーの嘘イベント告知などで大いに盛り上がった。その笑顔を見て、お客さんの顔にも笑顔が浮かぶ。

そして「てんたか」は今後、3ヶ月に一度のペースで開催される予定であること、ライブ以外でもさまざまな企画が用意されていることが伝えられた。

再びこの3事務所合同のお笑いライブが開催されることを知り、お客さんから拍手がわき起こる。お客さんの「てんたか」に対する満足度が現れた瞬間だ。

最後の最後は、全員で「ありがとうございました〜!」で終わるのかと思ったのだが(笑)、芸人の間で話題になっていた「見〜!」を、しんとすけのしんが最後にやって終わることが決定(笑)。

芸人とお客さんの期待を一身に背負ったしん。その場で足踏みをし始める。「ランニング見〜!」だ!期待がどんどん高まる。しんの足踏みの回転が早くなる。しんが駆け出し、舞台の最前線へ出てくると声高に叫ぶ!

「む〜!!」

お客さんは爆笑!しかし、芸人たちは苦笑い(笑)。松田の「終わろう。終わろう」の声が響く(笑)。

伝説の一夜は、こうして最高の(?)エンディングを迎えたのだった。

会場はいつまでも熱気に包まれていた。来場したお客さんの顔は上気し、笑顔が浮かんでいる。

見渡す限りの笑顔が、ゆっくりと出口へと向かっていく。

これが、「てんたか」に対する答えだろう。誰もが満足し、心のそこから楽しんだお笑いライブだったことの証だ。

「楽しかった」

何処かから声が聞こえてくる。筆者のその声に同意だ。これほど楽しい時間を過ごしたのは、いつ振りだろうか。いや、もちろん、お笑いライブに行けば、楽しい気持ちになるのは当然だ。しかし、「てんたか」で得られた満足感は、また違ったものだった。

沖縄のトップを走るお笑い事務所の芸人が一堂に会し、最高のネタを見られた満足感が、いわゆる「半端ない」のだ。トップランナーの全速力を体感したような、そんな感覚に包まれていた。

世界大会クラスのスポーツの試合を見たかのような感覚と言っても良いかもしれない。

そんなライブが3ヶ月に1度見られるのだから、「沖縄に生まれて良かった〜!」と叫びたいくらいの気持ち。

最高のライブ、伝説の一夜を体感できたこと、そして、そのライブのレポートを書けたことを嬉しく思う。

最後に、UNDER5 AWARD 2024沖縄地区選考会にエントリーした、若手芸人と「てんたか」のステージで最高のパフォーマンスを見せてくれた芸人たちへの感謝の言葉でレポートを締めたいと思う。

沖縄のお笑い界を背負って立つかもしれない若手芸人、沖縄のお笑い界を背負って、トップを走る芸人へ感謝の気持ちを込めて。

最高の笑いをありがとう!

-イベントレポート, お笑いライブ