インタビュー

エンタメを「作る」と「演じる」を知る人物〜りかろっかさんが語る沖縄エンタメの面白さと未来とは〜

新連載インタビュー企画・ENTABIZ OKINAWA〜ビジネスは舞台だ。生き方こそがエンタメだ〜vol.2

この連載は、本サイト管理者である「へっさん」こと平敷篤が、沖縄のエンタメやビジネスを担う人々のインタビューを行い、沖縄のインタビューライターのメインストリームを目指す企画です。

シリーズ第2回目は、沖縄のエンタメを「制作者」と「出演者」として見てきた「りかろっか」さん

芸能事務所のマネージャーや舞台制作の仕事を経たのち、昨年までタレントとして活躍。
現在は「ウーマンマイクアワー」というイベントを主催し、出演者としてマイクの前に立っています。

果たして、「りかろっか」さんとは、どのような人物なのか?
彼女の目に写った、エンタメの裏側、表側とはどのようなものだったのか?

そのリアルな姿・本音を聞いてみました

裏方に興味を持ったのがエンタメ界への第一歩だった⁉︎

「りかろっかさんがエンタメの世界に興味を持った、きっかけは何だったんですか?」

この質問に対する答えは、とても意外なものでした。

実は、もともとお芝居が好きだったんです
それで、長男が1歳の頃、ちょうど琉神マブヤー(2008年に放送が開始された特撮番組。ローカルヒーローとして全国でも有名になった)のヒーローショーを見に行きました。

沖縄のヒーローショーは独特なんですね。
演者さん自身がスーツアクターもやっていて。

役者さん自身が素晴らしいのはもちろんなんですが、私は、このショーを作っている受付や制作など、スタッフの皆さんに目がいったんです。

舞台を裏で支える仕事ってどうやっているんだろう?って興味を持ってしまって(笑)」

そう、りかろっかさんがエンタメの世界に興味を持ったきっかけは、ステージを作る裏方の仕事が気になったからでした。

その後、こどもサポートとして舞台に携わった際、某芸能事務所のマネージャー職を募集していることを知ります。

「マネージャーになったら、裏方さんとか、制作の仕事も学べるんじゃないかと思って、マネージャーになりました」

りかろっかさんは、優しい笑みを浮かべながら答えてくれました。

驚きなのは、りかろっかさんの目の付けどころではないでしょうか。
芝居が好きだから「俳優さんになりたい」ではなく、「このステージを支えている人の仕事が知りたい」という感覚になったというエピソードは、キラリと光るセンスを感じます。

「私、ピタゴラスイッチ的なことが好きなんだと思います
ここがこうなっているから、こういう結果になるんだとかを知るのが楽しくて。

全部が点と点でつながって、パチッとハマるのがすごく楽しいんです。
う〜ん、きっと、そういう仕組み的なものが好きなのかなって思います。
でも、電気とか配線とか、ああいう物理的なものは苦手なんですけどね(笑)。

ご縁というか、人と人をつなぐというか、そんな点にフォーカスした仕組み作りが好きなんだと思います」

人と人をつなぎ、ひとつのステージを支え、成功に導く裏方、制作という仕事が好きになったりかろっかさん。
誰もが華やかな舞台に目を奪われてしまうのに対して、裏方という縁の下の力持ちに目を向けたセンスが、今の活動の面白さに通じているのかもしれません

ひとりの主婦が芸能事務所のマネージャーとして活躍!その楽しさや大変さとは?

もともと、りかろっかさんは東京出身で、沖縄で言うところの「島ないちゃー(沖縄に住んでいる本土出身者)」です。

彼女が沖縄に移住してきたのは、ちょうど20年前でした。
きっかけは、家族との沖縄旅行。
沖縄の青い空、青い海、白い砂浜に心を奪われたそうです。

その中でも、最も心を奪われたのは「人のあたたかさ」でした。

さまざまな地方から人が集まる東京では、自分自身に余裕のない人も多く、人当たりが冷たいところもあり、辛かったこともあったといいます。

それとは対照的に、誰にでも優しく接してくれる沖縄の人のあたたかさに魅了されたのが、沖縄への移住を決めた要因でした。

りかろっかさんが芸能事務所のマネージャーになったのは2018年のこと。
それまでは何をしていたのかをうかがいました。

それまでは主婦をしてました
コールセンターでテレオペの仕事をしたり、コンビニや雑貨屋さんで働いたり、それこそ、SEOライターもしたり、色々なパートをしているような、本当にひとりの主婦でしたね」

その後、芸能事務所のマネージャーになったきっかけは、先述のとおりです。

沖縄のエンタメを面白くしようと日々頑張っておられる、今のりかろっかさんからは想像できませんが、エンタメの世界に入る前は、ひとりの主婦だったとは驚きでした。

2018年に芸能事務所のマネージャーとなったりかろっかさんですが、マネージャーをしていた頃に印象的だった出来事を聞きました。

「やっぱり、担当していた若手の芸人さんたちが採用されたことが印象に残っています
仕事の依頼は、どうしてもベテランの先輩方に偏ることが多いんです。
若手にとって、舞台もそうですけど、イベントとか、司会の仕事も次のステップを踏んでいくためには、すごく重要なんです。

だから、私自身、マネージャーとして若手の芸人さんをプッシュしていました。
プッシュした若手の芸人さんを企業が採用してくれたときは、本当に嬉しかったです

それに、その芸人さんたちは力があるのをずっと見てきていたので、活躍してくれたことも嬉しかったですね。次のステージへの一歩を踏み出してくれたぁって」

マネージャーの仕事は、人を育てることも大事だと語ってくれたりかろっかさん。

人と人のつながりを大事にしながら、誰かの成長を後押ししたいという優しさは、きっと多くの芸人さんたちに伝わっていたのではないでしょうか

この話をされているときの、りかろっかさんの本当に嬉しそうな顔がとても印象的でした。

裏方から表舞台へ!りかろっかさんに訪れた転機とは?

芸能事務所のマネージャーとして働き出してから、2年後の2020年、新型コロナウィルス感染症の影響もあり、エンタメ業界は大きな岐路に立たされることになります。

コロナ禍がきっかけで、りかろっかさんは芸能事務所を退職し、本格的に舞台制作の世界に足を踏み入れることになりました。

その頃は、エンタメ業界がリアルな舞台から、ライブ配信への移行を始めた時期。
フリーランスの制作者として、さまざまなライブ配信の仕事に携わることになります。

たとえば、ライブハウスが主催していたライブ配信の企画が、そのひとつです。
人が集まる場所であるはずのライブハウスが開店できない状況の中、それでも色々な人を知ってほしいという願いを持った運営者のライブ配信のスタッフとして活動。

コロナ禍が過ぎ去った後は、舞台などの運営・制作スタッフとして、さまざまな場所で多くの人の笑顔をつくる仕事に携わってきたのです。

そんな中、りかろっかさんにとって、大きな転機が訪れます。

なんと制作スタッフという裏方の仕事から、舞台に立つ側であるタレントとしての道を歩むことになったのです。

りかろっかさんは、なぜ表舞台に立つことを決めたのでしょうか。

「実は私自身、想像もしていなかったんです(笑)
フリーランスとして足掛け3年やってきて、果たして、これでいいのかな?という思いが出てきたんです。

裏方のことも段々覚えていって、自分の求めていたものを形にできるようにもなってきて、でも、なんでしょう、これだけでは物足りないなって気持ちが出てきて。

それなら、今度は私が表に立つ側になったら、どんなアプローチができるんだろう、縁の下の力持ちっていう立場にいた私には、どんなことができるだろうって思うようになったんです。
それで、興味が出てきて、思い切って挑戦してみたという感じですね」

りかろっかさんは、その当時の気持ちを思い出すように、真剣な眼差しで語ってくれました。

さらに、この決意を叶えるかのような偶然が、りかろっかさんに訪れます。
毎年、芸人のオーディションを行っているはずの事務所が、その年は偶然にもタレントも募集していたというのです。

「自分自身は、芸人さんのように場を賑やかしたりすることはできないけど、タレントなら色々なことができるのではないか」

りかろっかさんは、そう思い、オーディションに臨みます。
結果は、その場で合格。
芸能事務所に所属し、タレントとしての道を歩み出したのです。

これをきっかけにラジオ番組を担当したり、お笑いライブでMCの立場で出演したりと、活躍の場を広げていきます。
そこで、りかろっかさんにタレント活動を開始したことで印象に残っていることを聞いてみました。

私のことを、推してますと言ってくれる方が現れてくれたことですね。

本当に驚いてしまって。
私自身が推し活をしているので、わかるんですけど、推しって尊いものなんです。
その尊い、推しという存在になれたんだぁっていうのが1番印象に残っています

その方は、今でも私のイベントに来てくれています。
本当に、ありがたいですね

自分自身がタレントとして活動することで、誰かの「推し」という存在になれたということを、少し恥ずかしそうに、それでも、それが誇らしいことであることを噛み締めるように、りかろっかさんは答えてくれました。

りかろっかさんの言葉からは、「推し」の大切さを知っているからこそ、ファンになってくれた方を大切にしたいという気持ちがあふれているように感じられます。
だからこそ、その誠実さにファンがつくのではないでしょうか。
そして、りかろっかさんに3度目の大きな転機が訪れるのです。

沖縄をスタンダップコメディの最前線に!ウーマンマイクアワーの立ち上げと未来

りかろっかさんが、表舞台に立つようになってから、ある表現形式に出会うことになります。
それが「スタンダップコメディ」でした。

スタンダップコメディを簡単に表現すると、一人のコメディアンが観客の前でマイクを使い、ユーモアを交えた話をするパフォーマンスです。

その出会いは、沖縄で活躍する漫才コンビ、オリオンリーグの玉代勢直さんが毎週主催している「玉ライブ」でした。
自分の思いや考え、感じていることをコメディとして表現する姿に感動したといいます。

そこから、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん、日本のスタンダップコメディのパイオニア、ぜんじろうさんのパフォーマンスを目の当たりにします。

私のやりたいのはこれだ!私らしさ、自分らしさを出していくのはこれだ!

りかろっかさんは、自分が本当にやりたいことを見つけました。
その思いは、日に日に強くなっていったそうです。

事務所に所属していれば、色々な経験はできるでしょう。
しかし、それは逆に自分らしさを押し殺すことにもつながってしまう。
りかろっかさんは、非常に悩みました。

最終的には、自分らしさを思う存分発揮できるフリーランスという立場で、この面白さを伝えたいと考えるようになったそうです。

「スタンダップコメディって、マイク1本と自分の身体ひとつっていう、極めてシンプルな形式なんです。
自分の感じていることを、自分の言葉で表現できるのは、すごいなと思って。

そして、その思いをお客さんと共有できるという点に魅力を感じました
それをやっていくには、フリーの方が良いのかなと思うようになったんです」

りかろっかさんは、「事務所退所」という、大きな決断を下しました
これは、自分を120%出していくための決断だったそうです。

フリーとして活動するようになったりかろっかさんが始めたのが、「ウーマンマイクアワー」という、女性だけのスタンダップコメディ

りかろっかさんは、なぜ「女性だけの」スタンダップコメディを主催するようになったのでしょうか。

「実は、単純な理由だったんです。
日本で女性だけを集めたスタンダップコメディってあるのかな?と思って調べてみたんですね。
ところが、これが無かったんです。
そこで、女性だけのスタンダップコメディを始めてみました」

沖縄は、さまざまな問題が山積していることもあってか、女性も心の内を話したいと思っている人が多いと感じたのだと言います。

貧困問題とか、離婚率が高いとか、女性だからこそ言える問題ってたくさんあるんです。
心の中のモヤモヤを吐き出して、そして、それを笑い飛ばしていこうよ!そんな場所を作りたいと思ったのが、ウーマンマイクアワーを始めた2つ目のきっかけです」

ともすれば、自分だけの問題だと考え、ひとりで抱え込んでしまいそうなことを、誰かと分かち合い、笑い飛ばしてしまう。

「ひとりじゃない、同じような人がいる、みんながいる」という気持ちになることができれば、多くの人が幸せになれるのではないでしょうか。

りかろっかさんの取り組みは、コメディという枠にとらわれることなく、さらに大きな枠組みを作り上げるための土台になるように思えます

「女性特有の問題を話せるのも、大事なことかなと考えています。
性別の違いというか、男女で分からないことって意外と多いんです

その違いを、女性が発信することって大事なことではないかと考えているんですね。

イベント終わりに、お客さんから”知らないことを知れました”とか、”すごく勉強になりました”って声を聞くと、ありがたいな、やったかいがあったなって思います」

主催イベントで、社会的な問題をシェアしあい、理解し合うことができることが、本当に嬉しいと笑顔で語るりかろっかさん。

1番身近な社会って家庭だと思っています。
でも、家庭の中でも分かり合えないことってありますよね。
それを愚痴るんじゃなくて、笑い飛ばせたら、こんなに良いことないなって思っている
んです。
それを、ウーマンマイクアワーを通して理解してもらえたら、最高に良いと思いませんか?」

嬉しそうに語る、りかろっかさんの笑顔は輝いています。

しかし、ウーマンマイクアワーを開催する際、大きな問題があるようです。

女性のコメディアンが少ないというのが、今、一番頭を悩ませていることですね。
こんなに話が面白いのに、どうしてスタンダップをやらないんだろうって人も多くて…。

誘ってみるけど、”う〜ん、マイクの前に立つのはちょっと…”ていう反応なんです。
マイクの前に立つという、その一歩が踏み出せないみたいで。
だから私は、その一歩を踏み出す、その背中を支えられるような存在になりたいと考えてます。

なので、女性のスタンダップコメディアンの仲間を増やしていくのが、今後の大きな目標です。
スタンダップコメディは、最後にオープンマイクという、お客さんも参加できる時間もあるので、そこで話してもらえるようになると、嬉しいです

ウーマンマイクアワーを、女性が心のモヤモヤを吐き出し、一緒になって笑い合い、理解しあえる場にしたい。

そんな素敵な思いが、りかろっかさんの言葉から感じとることができました。
そして、その思いを語るときのりかろっかさんの顔は輝いていて、まさに自分自身のやりたいことに邁進する強さ、美しさがあふれ出ていました。

りかろっかさんが送りたい言葉とは?

インタビューの最後に、りかろっかさんが、皆さんに送りたい言葉を聞いてみました。

「これは、広義の意味なんですけど、”生きている限り、すべてネタ”です。
どんなに悲しいこと、辛いことがあっても、そのときはしんどいと思うんです。
でも、時間が経てば全部笑い話にできると思っています。

だから、ネガティブなことがあったら、”これ、ネタになるな”って思うようにしましょう(笑)。
暗ければ暗いほど光って強くなるので。

それが、自分自身の特技とか、特徴になるんだよっていうことを皆さんに感じてほしいなと思っています。
まずは、感情をしっかり感じ切ってほしいです。
感じきった後、笑い飛ばしましょう。

そうすれば、自分自身がかわいそうっていう感情もふっ飛んでいってくれますから(笑)。
自分を守る心を持ちつつ、それに執着しないこと。
そして、それを笑い飛ばせるようになったら良いんじゃないでしょうか。

私自身が、思い悩むタイプだったんですけど、この考えに至ってからは、ちょっと答えが見えてきたのかなと思います。
辛いことも、いろんな角度から見ることで、ネタとして受け止めることができます
それを笑い飛ばしてしまう。

”生きてる限り、全部ネタ”

こう思えるようになったら、もう、本当に最強でしから(笑)」

カラッと笑い飛ばすように語ってくれた、りかろっかさん。
色々と悩んでいたご自身の経験から、この言葉にたどり着いたそうです。

辛いこと、悲しいことが起こると、私たちは「どうしてこんなことが…」と思い悩み、立ち止まってしまいます。
しかし、そこから時間がかかっても良いから、笑い飛ばせるようにする
そうすれば、自分自身の心を守りながら、明るく、楽しく生きていける

まさに、人生はネタにあふれていて、エンタメにあふれているんだということを、りかろっかさんから学ばせていただきました。

沖縄で、女性だけのスタンダップコメディ「ウーマンマイクアワー」を主催する、りかろっかさん。

彼女が作り出すエンタメの場が、今後、多くの人が集い、笑いと幸せを共有できる場となるのではないでしょうか。
そして、その真ん中には、いつものように幸せそうに満面の笑顔でネタを披露し、挨拶をする素敵な女性、りかろっかさんが立っているに違いありません。

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