前の記事で、交通事故で入院していたことを書いた。
その際、足を4箇所骨折したことも。
経過観察のために、3ヶ月に1度のペースで、手術を受けた病院に通っている。
診察前にレントゲンを撮って、主治医の問診を受ける。
この繰り返しだったのだが、前回の問診の際、僕はどうしても気になっていることを口にした。
「先生、右腕を後ろに引いたり、上げたりする際に肩が痛くなるんですが…」
事故の影響なのかどうか、問診だけでは分からないという主治医は、こう提案する。
「じゃあ、MRIで調べてみましょうか」
検診から2週間後、僕はMRI検査を受けることになった。
今回は、そんなお話。
当日の朝、天気は小降りの雨模様。
翌日から寒くなる予報だったので、寒さは特に感じられない。
いつも通りの道を通り、いつも通りの有料駐車場に車を停め、いつも通り入り口を入り、センサーカメラの前に立つ。
35.8度と表示されたのを確認して、手指消毒用のジェルを左手で受け止めて両手に擦り込んでいく。
実のところ、MRI検査は初めてだ(事故直後に受けたような感じもするが、はっきり覚えていないので)。
だから、普段以上に緊張で、心臓がバクバクする。
僕は、病院に来ると心臓が早鐘を打つタイプらしい。
だから、生涯、正確な血圧を測れないと思っている。
ただ、疑問なのは、入院中は正常に測れていたこと。
不思議な話だ。
ちょっと脱線してしまったので、話を戻そう。
総合受付で受付を済ませ、レントゲン検査の受付へ。
そこで受付を済ませ、MRI撮影のための受付へ。
病院の受付の多さに少し辟易する。
MRI撮影の受付に、検査ファイルを置き、名前を呼ばれるまでソファに腰掛けて読書。
名前を呼ばれて、更衣室に入り、検査着に着替えてようやく検査に向かう。
MRI検査は金属類は不可なのは知っていたのだが、なんと「ヒートテック」もダメらしい。
熱を持って、火傷する恐れがあるらしいのだ。
病院に行くと、少し賢くなれるらしい。
そんな風に思いながら、検査時間までをボーッと病院のポスターを見ながら過ごしていた。
いよいよMRI検査。
白い筒状の機械の前に、横になるための台があり、そこに横になる。
右肩を調べるための機械だろうか、白い「つ」の字のようなものを肩の近くに固定される。
「MRIは動きに弱いので、あまり動かないでくださいね」
看護師さんが優しく、今度は僕自身を固定しながら語りかけてくる。
「気分が悪くなったりしたら、このスイッチを握ってください」
左手に、急を知らせるためのスイッチというより、スポイトのピペット球のようなものを握らされる。
いよいよ検査が始まるんだなぁ、と思うと、より緊張してしまう。
このスイッチ、使わなくて済むように。
そんな、誰に祈るでもないことを心の中でつぶやく。
そして、最後にヘッドフォンをつけられる。
ピアノアレンジされた、有名な曲が流れている。
リラックスしてもらうためのものだろう。
ちょっとだけ安心する。
台が動き出し、筒状の機械の中に体が飲み込まれていく。
検査が始まると、ヘッドフォンの意味がないことに気づく。
MRIから発せられる音の大きさに、音楽がかき消される。
ゴウンゴウン、ガガガガ
とにかく、大きく不快な音が鳴り響く。
時々、その音が止まったときだけ、ヘッドフォンから音楽が聞こえてくる。
先ほどとは違い、あまり聞いたことのない曲。
選曲は誰がしているのだろう?
何か決まったものがあるのだろうか?
そんなことを思いながら、「早く終わらないかな」などを考える。
ただ、ひとつ、面白いことに気がついた。
MRIの音が止まると、どこからか聞こえてくる音があった。
「ドン、チッ、ドン、チッ、ドン、チッ」
誰かがラップバトルでも仕掛けてきているのかと思わせる、心地よいほどに一定のリズム。
本当に、今にも誰かがラップを始めそうだった。
そう思った瞬間、笑いが込み上げてリラックスできた。
結局、診断結果は肩の腱板損傷。
事故の影響によるものかどうかは、判断がつかないらしい。
自然に治る人もいるとのことだったので、僕は自然に治ることを願って、何もせずに帰ることにした。
それにしても、病院の駐車場で駐車料金を払うのって悲しいな、と思った。